檸檬のころとチョコレット・オーガズムとパレード

檸檬のころ (幻冬舎文庫)

檸檬のころ (幻冬舎文庫)

たぶん、先に底辺女子高生(asin:4344408322)読んじゃったから、だったと思うのだけれど、なんていうか自分の身を切り売りしている小説だなあと思った。どのエピソードにもどこかに作者が絶対出てくる、とでも言うのか。学生時代によく言われていたことだからこの辺り、ものすごく過敏なんだろうな、という気持ちもあるものの。
でもきっと、この小説は絶対に書きたいと思っていたんだろうなあという気持ちもなんとなくわかるし、今までのこの人の小説でここまで切り売り型の小説はなかったから、今回だけは、というのがあったのかなあとも思うので良いのかな、とは思うものの、こういうかたちの小説はなんとなく苦手というか「止めておいた方が良いんじゃないのかなあ」という個人的な意見を持っているので、どうしても受け入れにくいというか素直に読めなかったような気がする。
なんとなく、期待度が高かっただけにちょっと残念、というのが正直な感想。


チョコレット・オーガズム (集英社文庫)

チョコレット・オーガズム (集英社文庫)

野中さんの本はちょっとだけ久しぶりに読んだ。
この人の文章はなんというか、ものすごく安定感があって、読んでる方もものすごく安心してこの中に入っていけるものが多いのだけれど、この本もしかり、で、内容も野中さんの小説でよく出てくるような少しむごくて、安心していたら突然えぐられる、みたいな内容で、見事にやられた。
表題作ももちろんそうだったのだけれど、一緒に入っていた『なつやすみ』の終盤、あれはほんとにやられた。やめてやめてそんなのなしで本当にお願いします、という気分に本当になってしまって、一気にへこんだ。あともう1冊、野中さんの本が積読されているのだけれど、ちょっと勇気が出なくて手が出せない(けれど出したいジレンマ)。
あー、あれだ。海辺のカフカの真ん中辺りのあの衝撃と似てる。さらっと流されるその文章がこわい。


パレード

パレード

あーこれは、たぶんきっと川上さんにしかできない、という世界がすんごくひろがっている本。
小説、というより本として読んだ方がきっと楽しめるなあ、と思ったりして。というのも、「センセイの鞄(asin:4101292353)」の世界の中であったほんの一握りの場面の話なのだけれど、この本の中にも出てきたように相変わらず食べものが美味しそうでつくりたい、と思ったりもできて、それ以外のお話は本当なのかうそなのかわからないけれどでもそれでいいや、と思えるしで本当に楽しかったから。
変な話、お風呂のお供にしたい。この本は。電車とか部屋とかそういういろいろなものがある場所じゃなくて、お風呂で何も考えずにひとりでぼけーっと読んでいたいような、そんな感じ。